蛍光灯が生産終了!? LEDへの交換は必須? これから訪れる暮らしの変化をプロが解説

家電量販店などの照明器具コーナーへ行くと、LED照明がズラリと並んでいますが、以前は「蛍光灯」が主流でした。最近は手に取る機会も減った蛍光灯ですが、生産終了……という話題を度々見かけます。
では、本当に生産は終了しているのか? 終了している場合、LED照明への移行はどのようにするべきなのか? 蛍光灯の生産終了に関するさまざまな疑問を家電ライター兼アドバイザーの藤山哲人さんに伺いました。

お話を伺った藤山哲人さん プロフィール

家電アドバイザー藤山哲人のプロフィール
藤山哲人さん

家電の紹介やしくみ、選び方や便利な使い方などを紹介するプロの家電ライター。独自の測定器やプログラムを開発して、家電の性能を数値化(見える化)し、徹底的に使ってレビューするのをモットーとしているため「体当たり家電ライター」との異名も。「マツコの知らない世界」(番組史上最多の6回出演)や「アッコにおまかせ」、「NHKごごナマ」などをはじめ、朝や昼の情報番組に多数出演。現在、インプレスの「家電Watch」「PC Watch」や「文春オンライン」「現代デジタル」などのWeb媒体、ABCラジオで連載やコーナーを持っている。

家電ライターの藤山哲人です。近年ではLEDが主流となった照明器具ですが、今でもお家で蛍光灯を使っているという方もいらっしゃるでしょう。何の準備もなく「蛍光灯が生産終了」と言われても、「じゃあ、どうしたらいいの? 」と不安になりますよね。そこで、これから訪れる暮らしの変化やLED照明へ移行する際のポイントなどを解説いたします。

「蛍光灯が生産終了」この言葉に隠された本当の意味とは?

「蛍光灯が生産終了」この言葉に隠された本当の意味とは?

蛍光灯ばかりが注目されていますが、実際は水銀灯も生産が終了しています。その理由のひとつは“水銀による環境問題”です。水銀は揮発性が高く、さまざまな排出源から環境に排出されて生物の体内に蓄積し、その神経系に有害な影響を与える物質。その削減に向けて締結されたのが「水俣条約」で、水銀灯は製造・輸出入の禁止対象となり、蛍光灯に関しては水銀の封入量を5~10mgに規制されました。

では、水銀の封入量の規制に留まった蛍光灯は、なぜ生産終了となったのか?
それは政府が打ち出した政策によるものです。2011年の東日本大震災以降、日本国内では電力不足などから省電力への意識が高まり、LED照明が急速に普及しました。現在のLEDの発光効率は蛍光灯の1.3倍で、理論上は2倍の発光効率も実現可能とされています。発光効率が良い照明を使えば日々の消費電力が抑えられ、世界中で削減を目指している温室効果ガスの排出を減らすことにも繋がるのです。

そうした理由から、政府は蛍光灯照明からLED照明への移行を推し進め、「高効率照明(例:LED照明、有機EL照明)については、2020年までにフローで100%、2030年までにストックで100%の普及を目指す」と表明しました。

とは言え、フローやらストックやら言われても、分かりにくいですよね?
ざっくり言うと、「2020年までに蛍光灯や水銀灯の照明器具は生産・出荷を終了」して、「2030年には、今使われている蛍光灯や水銀灯の照明器具をぜんぶ、LEDや有機ELの照明器具に変えてね」ということです。

さらにややこしいのは、蛍光灯や水銀灯の“照明器具”は生産・出荷を終了という部分。つまり、照明器具はすでに生産終了しているんですが、交換用の蛍光ランプや蛍光管は現在も生産されているんです。家電量販店やネット通販で、蛍光管などがまだ購入できるのは、そのためですね。

これからはLEDの時代に! 今まで使っていた蛍光灯の照明器具は交換しないとマズい?

これからはLEDの時代に! 今まで使っていた蛍光灯の照明器具は交換しないとマズい?

蛍光灯の照明器具の生産は終了したけれど、交換用の蛍光管はまだ購入できる現状で「それなら、今ある蛍光灯はそのまま使い続けよう」と思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、先のことを考えると今のうちにLEDへと切り替えることをオススメします。
蛍光管が今も出荷されているとはいえ、生産量自体は減っており、価格も以前の1.2倍ほどになっています。さらに、使い終わった蛍光管をゴミとして捨てるとき、2021年5月現在は無料で回収されていますが、将来的には有料になる可能性も考えられます。電気代もLEDの方が省エネで、切り替えてから10年使い続けると20000円程度の節約となるため、導入時のコストを差し引いてもお得だと言えるでしょう。

電気代が安くなるだけじゃない! 蛍光灯をLEDに交換するメリット

LED照明はリモコンで明るさや色を調整できる

LED照明のメリットは、コスト面だけではありません。まず、虫が寄ってきにくいという点。虫は“光”に集まるというイメージがありますが、実は光に含まれる“紫外線”に集まっているのです。そのため、光に含まれる紫外線の少ないLED照明には、虫があまり寄ってこないということになりますね。
また、点灯する“本数”のみで明るさを調整する蛍光灯と比べて、LEDは明るさ・色を細かく調整できる機能が付いています。さらに、赤外線リモコンに対応しているものがほとんどなので、お家の家電を一元化できる「スマートリモコン」と連動させて、声で電源をオンオフできるIoT家電にすることもできますよ。

お家の蛍光灯照明器具をLEDに交換するためのフローと注意点

お家の蛍光灯照明器具をLEDに交換するためのフローと注意点

スタンドライトのようなコードに繋いで使う照明はともかく、天井の照明器具となると交換が面倒ではないか、と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実はそうでもないのです。現在使っている照明器具が「引っ掛けシーリング」で取り付けられている場合は、カチッと外して新しい照明器具を取り付けるだけなので、家電に詳しくない方でも簡単に交換できます。

「引っ掛けシーリング」で取り付けられている照明器具は簡単に交換できる

その際は火傷や感電をしないように照明の壁スイッチを切り、しっかりと熱を冷ましてからおこないましょう。また、天井に「引っ掛けシーリング」があるかどうかは、照明器具を取り付けた状態ではわからないため、今も蛍光灯を使っている方は、外して確認してみてください。

天井と直接繋がっている蛍光灯はLEDに切り替えるための工事が必要

一方で、お家の照明器具が天井と直接繋がっている場合は、工事が必要となります。これは電気工事士の資格がないとできない工事なので、電気工事店などに依頼するか、照明器具を買うときに家電量販店経由で頼んでおきましょう。一般的な住宅に多い石膏の天井であれば、作業にかかる時間は1箇所につき15分程度。 かかる費用も出張費が3000円ほどで、取り付け費も1箇所につき3000円程度なので、そこまで負担にならないかと思います。ちなみに、空気を循環させるファン付きの照明器具など、重さのあるものを取り付けたい場合は、その重量に耐えられる「引っ掛けシーリング」が必要となるので、業者には事前に伝えておきましょう。

より良いLED照明ライフのために! 知っておきたい注意点とポイント

LED照明器具は現在、とても多くの種類が販売されていますが、その選び方には意外な注意点があります。
まず、仕事用のデスクやお子様の学習机に置くスタンドライト。これに関しては“光に手をかざしたときに影が多く出ないこと”が重要なポイントです。LED照明は蛍光灯などと異なり、電球のなかに小さなLEDチップの光源が複数あるので、「多重影」といった複数の影ができてしまうのです。

多重影が出るLED照明と多重影が出ないLED照明の比較

デスクでの作業中、手元にたくさん影が落ちて、集中できなかったり目が疲れてしまったりするのは、あまり良い状態とは言えませんよね。そうならないために、デスクで使うスタンドライトは多重影ができにくい工夫がされたものを選ぶようにしましょう。

「光害(ひかりがい)」にならないよう照明器具を選ぶときは光の届く範囲をチェック

もうひとつ気をつけたいのが玄関先やカーポートなど、室外で使う照明器具です。LED照明は強い光を放つため、ご近所さんの敷地内まで明るく照らしてしまうことがあるんですね。街路灯や施設の照明による安眠の妨害や動植物への影響などを「光害(ひかりがい)*」といいますが、これも一種の光害で、トラブルの原因になりかねません。なので、照明器具を選ぶときは光の届く範囲をしっかりとチェックしてくださいね。
*光害は「こうがい」とも発音されていましたが、公害と区別するためここでは「ひかりがい」と記載しています。

蛍光灯が生産終了!? LEDへの交換は必須? これから訪れる暮らしの変化をプロが解説 まとめ

水銀灯や蛍光灯の生産が終了し、蛍光管の生産も減少していくなかで、LED照明への移行は自然な流れと言えます。地球規模の環境対策だけでなく、単純に家計の節約にもなるのがLEDです。まだお家で蛍光灯の照明器具を使っているという方は、この機会に思い切ってLED照明に変えてみてはいかがでしょうか。

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