おうちの中で苔を育てて楽しむ「苔テラリウム」。手軽に始められるのに奥が深いことから、おうち時間の増加とともにハマる方が増えているようです。そこで、苔テラリウムをもっと深く楽しみたい! という方のために、苔の生産販売やワークショップを行っている「苔むすび」の園田純寛さんに「ジオラマテラリウム」の作り方や魅力を伺いました。
苔むすび合同会社 代表
北海道大学大学院卒業(農学修士)。大学では苔を含む植物の生理生態、微生物との関係を研究。メーカーで研究開発に従事した後、独立。「苔むすび」として活動を始める。著書「はじめての苔テラリウム」（成美堂出版）
苔むすびの園田純寛です。容器の中で苔を育てるものを「苔テラリウム」と言いますが、そのなかでも世界観やストーリー性に凝ったものを「ジオラマテラリウム」と呼んでいます。苔を育てるのに慣れてきて、自分だけの苔テラリウムを生み出したいと思った方は、ぜひチャレンジしてみてください。
苔の世界をより楽しむ! 「ジオラマテラリウム」とは?
苔テラリウムは、容器の中に苔を植え、石や化粧砂を飾って小さな世界を生み出していきます。そこからステップアップしたのが、苔のある景色をより立体的に表現して楽しむ「ジオラマテラリウム」です。世界観に合わせて景色を生み出したり、フィギュアを置いてストーリー性をもたせたりと、自分好みにこだわって作れるので、苔テラリウム作りに慣れてきた上級者にオススメしたい楽しみ方ですね。
私は以前に自動車メーカーの展示会でジオラマテラリウムを制作したのですが、最大直径60センチの大きな容器を使いました。テラリウムの中には、水素燃料電池車と楽しんでいる人々のフィギュアを置いて、ストーリー性を持たせています。
ジオラマテラリウムの作例と作り方のポイント
ここからは、渓流の景色をイメージしたジオラマテラリウムを例に作り方を解説します。遠近感で奥行きを持たせるテクニックなどはジオラマテラリウム全般で使えるので、ぜひ参考にしてみてください。
1．容器を用意する
まずは直径10センチ程度のガラス製容器を用意します。ジオラマテラリウムに使う容器は、蓋と容器の間に隙間が空いた「セミオープン型」がオススメです。完全に密閉される「クローズド型」に比べると、多くの種類の苔をキレイに育てられますし、完成したあとの状態を維持しやすくなります。
2．土台の土を入れる
容器の中に土を入れます。ポイントは後ろの部分を高く盛って、“坂”にすること。ここでしっかりと勾配を付ければ見栄えが良くなりますよ。
3．大きい石を配置する
遠近法を活用する場合、大きめの石は前方に配置するのがオススメです。上の図のだと、石と石の間に川を作る予定なので、このような置き方になっています。ここでは石を3つ置きましたが、使用する容器の大きさに応じて、バランスを見ながら増やしたり減らしたりするのが良いですね。
石は、苔テラリウム用やアクアリウム用として専用ショップで売られているものが、量もサイズも手ごろで使いやすいです。外で採ってきた石を使う場合、カビ菌などを容器の中に入れないよう、キレイに洗ってから使用しましょう。
4．土台に水をかける
水差しを使って土全体に水をかけ、土台を固めます。全体の表面をしっかりと湿らせたら、1分ほど時間をおき、土が固くなるのを待ちましょう。
5．小～中サイズの石を配置
土が固まったら、小さい石と中くらいの石を配置していきます。遠近感を表現するため、前方には中くらいの石を、後方には小さい石を置きましょう。後方ほど小さいサイズの石を置くイメージです。
6．追加で土を盛る
石の裏側や容器の側面に近い部分に土を追加して盛っていきましょう。ここでも水差しで土全体に水をかけます。
土が固まっていないと苔の植え付けが難しくなるので、丸棒や割り箸の平らな部分を使って土を軽くトントンと押さえて固めます。強く押し付けすぎないように注意してください。
側面から見た図です。土台はS字カーブを描くように作っています。立体的に見せるには、このくらい高低差があったほうが良いですね。
7．細かい石や川砂を入れる
全体のバランスを見ながら、さらに細かい石を追加し、川を作る予定の場所に川砂を入れます。川砂は水が流れる奥は細くして、手前で流れを大きく開くように入れると、川を表現しやすいですよ。川砂は、苔むすびで販売しているものなら、「化粧砂 ライトグレー」が一番合うと思います。
8．苔を植える
ここからは苔を植える作業です。まずは前方にヒノキゴケなどの大ぶりな苔を植え付けましょう。
次に、ホソバオキナゴケなど小さな苔を植えましょう。ここでも後ろに行くほど小ぶりな苔を中心に植え付けるようにすると、遠近感を表現できて、見栄えが良くなりますよ。
セミオープン型の容器の場合、育ちにくい苔はとくにないので、好みのものを組み合わせるのもオススメです。私はたくさんの種類の苔を使うのが好きなので、ヒノキゴケ、タマゴケ、オキナゴケなど10種類以上の苔を組み合わせたジオラマテラリウムを作ることがあります。
9．ガラス粒で川を作る
最後に、クリアなガラス粒（化粧砂 クリアホワイト）を川沿いに敷いて、川の流れを表現しましょう。ここで完成としても良いですし、さらにフィギュアなどを配置して世界観やストーリーを広げるのも楽しいですよ。
素材に注意? 苔テラリウム用フィギュアの選び方
苔テラリウムやジオラマテラリウムで使うフィギュアは素材に注意しましょう。紙粘土や木製のものは、湿度の高くなりやすい容器の中ではカビが発生してしまいますし、金属製だと錆びるうえに、その錆の影響で苔が枯れてしまいます。入れるとしたら、プラスチックやソフトビニール、ゴム、ガラスなど、多湿の影響を受けない素材のものが良いですね。苔に影響が出る素材さえ避ければ、好きなものを組み合わせて使ってOKです。苔むすびでもお地蔵さまや動物など、さまざまな種類のフィギュアを取り扱っていますよ。フィギュア以外だと、貝殻を入れるのもかわいらしくてオススメです。
苔テラリウムをより楽しむ! プロが教えるジオラマテラリウムの作り方 まとめ
今回ご紹介した渓流の景色のジオラマテラリウムは、あくまで一例ですが、坂の勾配と遠近感を出すテクニックは応用しやすいものになっています。苔の種類を変えたり、フィギュアを入れたりするだけで、まったく違う世界観となるジオラマテラリウム。その奥深さにぜひ触れてみてください。
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