オリジナル手作りおもちゃがSNSで話題! 佐藤蕗さんに聞くアイデアを生み出すコツ

子どもが大好きなものと言えば、おもちゃ。お子様がいるご家庭には、いろいろなおもちゃがあると思いますが、そのなかに“手作りおもちゃ”があるお家は少ないのではないでしょうか? おもちゃは買うものだと思っている方も、手作りの世界を覗けばきっと興味が湧いてくるはず。そこで、手作りおもちゃ作家の佐藤蕗さんに、反響が大きかったおもちゃの制作秘話やアイデアを生み出す考え方などを教えていただきました。佐藤さんの作るおもちゃは、カラフルな色彩にポップなデザイン、アッとおどろくギミックなど、ワクワクがいっぱいです!

手作りおもちゃ作家・佐藤 蕗(さとう ふき)のプロフィール
佐藤蕗 (さとうふき) プロフィール

手作りおもちゃ作家

2児の母。建築設計事務所勤務を経て、第1子出産を機にフリーランスに。育児をしながら作っていたおもちゃが反響を呼び、イラストレーターの活動のかたわら、造形作家として、雑誌、web、テレビで活躍中。著書に「ふきさんのおもちゃ大百科」シリーズ(偕成社)、「親子で笑顔になれる “魔法の手作りおもちゃ”レシピ」(宝島社)などがある。
ホームページ:https://note.com/fukisato
オンラインサロン:https://community.camp-fire.jp/projects/view/529758

手作りおもちゃ作家の佐藤蕗です。我が子と一緒におもちゃを作り、遊べる期間は短いからこそかけがえのない時間。皆さんにもそんな豊かな時間を過ごしてもらえるよう、私のSNSや著書『ふきさんのアイデアおもちゃ大百科』で紹介したおもちゃの制作エピソードを交えながら、アイデアの生み出し方やおもちゃ作りの考え方についてお話しさせていただきます。

ひらめきのヒントは日常にある? 手作りおもちゃのアイデアが生まれる考え方

パスケースからアイデアが生まれた「ふうとうえほん」

アイデアはものづくりの第一歩であり、とても難しい部分でもあります。漠然と頭のなかで「楽しいものを作りたい」と考えていても、面白いアイデアはなかなか浮かんでくれません。でもアイデアの種って、実は日常にたくさん散らばっているんですね。たとえば私が以前作った「ふうとうえほん」は、窓付き封筒と紙に絵を描いて、見え隠れする絵の動きでストーリーが楽しめる仕組みです。このアイデアは、ある出来事がきっかけで生まれました。

長男が幼いころの話ですが、乗り物で移動すると、退屈でぐずったり泣き出したりして大変だったんです。しかし、ある日パスケースの中のSuicaを出し入れして、ペンギンの絵をチラチラッと見せてみたところ、すごく喜んでくれました。そのときのパスケースとSuicaの動きからひらめいたのが「ふうとうえほん」です。とてもシンプルですが、アレンジが無限にできる楽しいおもちゃで『ふきさんのアイデアおもちゃ大百科』にも掲載しています。こんな風に日常のちょっとしたやり取りや行動が、ものづくりのアイデアにつながっていくんだと思いましたね。

日常にあるアイデアの種に気付けるかは、子どもたちと過ごす時間も大きく関わっています。たとえば「夏と冬では太陽の高さが違う」だとか、大人がスルーしてしまうような現象も、子どもといるときは「なんでだろう? 不思議だね」って面白がることができるんですね。私の住むマンションでは、冬に太陽がガラスに反射して虹が出るんですけど、そういうのも子どもがいると共有したくなるし、虹の出どころに手をかざすとビームみたいに遊べるな、とか考えちゃいます。それから、虹に黒い紙を当ててもはっきり映らないけど白い紙だときれいに見えるとか、虹を映した紙を曲げると虹もグニャッと湾曲して面白いとか。ちなみにこれは息子が発見した現象です(笑)。そうやって、子どもと一緒にいろんなものごとをあらためて体感することが、アイデアの種に気付くきっかけになるはずですよ。

ヨーグルトカップにたくさん切り込みを入れると簡単に裏返すことができる

日常にある身近な素材も、少し視点を変えるだけでアイデアが生まれることがあります。最近の発見はヨーグルトカップ。ヨーグルトカップを工作に使おうと思ったのですが、外側のパッケージが気になっちゃって……どうにか上手に裏返せないか試行錯誤してひらめいたのが、縦にたくさんの切り込みを入れること。そうすると簡単に裏返って、さらにコロンとしたかわいらしい形になるんです。ふたつ重ねれば雪だるまが作れるし、ほかにもいろんなものが生まれそうでワクワクしましたね。身の回りにあるものでも少し視点を変えて手を加えると、きっと新しい発見があるはずです。大喜利感覚でいろいろ楽しんでみましょう!

子どもの“好き”を大切にした手作りおもちゃ

子どもの“好き”を大切にした手作りおもちゃ「パンダ風呂」

おもちゃ作りでは“作る相手”を意識することも大切です。今から8年くらい前、長男がイヤイヤ期のころに作ったおもちゃがありまして、その名も「パンダ風呂」。食品トレーを切り抜いて作ったパンダをお湯に浮かべて「お風呂に動物がいるよ!」と声をかけると、お風呂に入りたくないとぐずっていた息子が大喜びで入ってくれました。なぜパンダなのかというと、息子が動物好きで、なおかつ黒ペン1本ですぐに描けるから。当時はじっくり何かを作る時間が取れなかったので、手軽かつ息子が喜びそうなもの……という感じで生み出したわけです。
同じ悩みを持つ親御さんが多かったからか、真似してくれた方もたくさんいて、なかでも面白かったのがパンダの代わりに“パン”を浮かべるアレンジ(笑)。パンが好きなお子様のためにクロワッサンなどを描いたそうです。「うちの子だったら何を喜ぶかな?」と考えて、その子が好きなものを作るのってすごく良いなと思いました。

「バショウカジキ」のオリジナル魚帽子

手作りおもちゃとは少し違いますが、我が家の長男は魚がすごく好きで、さかなクンの講演会に行くときにオリジナル魚帽子を作ってあげたんですね。帽子は「ただの魚」にするのではなく、長男が一番好きだった「バショウカジキ」で作ったんですが、とても気に入ってくれました。家でもずっと被っていて、寝るときまで一緒だった日もあるほど(笑)。子どものために作るとしたら、その子が“今、何が好きなのか”を理解することでよりステキなおもちゃが生まれるはずです。

子どもの好きなものってたくさんありますし、小さなころはそれが移り変わりやすかったりもしますよね。でも、子どもの様子をよく見ているといろんなことがわかってきます。たとえばYouTube。お子様がYouTubeをよく見ていると「うちの子はYouTubeが好きなんだ」と思うかもしれませんが、そのなかでもとくに多く見ているチャンネルってあるんですよね。アニメを見ているのか、ゲーム動画を見ているのか、ホビー系でも、風船みたいなおもちゃか、ハイテク系おもちゃなのか……お子様が好んで見る動画の傾向をチェックしていると、どんなものに興味を持っているかが、具体的に見えてくるんじゃないかなと思います。

子どものころの妄想が実現!?「走る! チビ忍者」のアイデアが生まれたきっかけ

子どものころの妄想が実現!?「走る! チビ忍者」のアイデアが生まれたきっかけ

【材料】
・色画用紙
・下書き用の紙
・透明な下敷き

【道具】
・両面テープ
・ハサミ

【作り方】
1.下書き用の紙に、忍者の絵(7センチくらい)を下書きする。
2.1と色画用紙を重ねて、ずれないようにしっかりと押さえながら、2枚同時に切る。
3.切り抜いた色画用紙に顔を描き、両面テープで透明な下敷きに貼って完成!

透明な下敷きに忍者を貼った手作りおもちゃ「走る! チビ忍者」

長男が小さいころ、我が家はよく電車で移動していました。今ならゲームなどで時間を潰せる長男も、当時はそういうわけにもいかず……そんななか、自分の幼少期を思い出してひらめいたのが「走る! チビ忍者」です。子どものころ車や電車の移動が退屈だった私は、外の景色を眺めながら“野山や電線の上を駆け抜けていく忍者”を妄想していたんですね。それを実現しようと試行錯誤してできたのがこのおもちゃ。

最初は厚紙に棒を付けたものを考えたりもしましたが、それだと臨場感が足りなかったので、できるだけシンプルかつ、忍者が実際に走っているように見えることを意識して、透明な下敷きを使いました。電車や車の窓にあてると本当に忍者がヒュンヒュンと走っているように見えて、息子が大喜びで遊んでくれたのもうれしかったですね。以前は周りの迷惑にならなければ電車でもチビ忍者で遊べたのですが、最近の時勢では公共交通機関で遊ぶのは避けたほうが良いと思います。車でも同じように遊べるので、ぜひドライブのお供として作ってみてください!

ちなみに「走る! チビ忍者」をTwitterに載せたところ、その投稿が世界中に広がって「私も子どものころ、同じ想像をしていた!」というコメントをたくさんいただきました。外国の方だと「スケートボードに乗った人」とか、ゲームキャラクターの「ソニック」の名前などがあって面白かったですね。仕組みはシンプルなので、忍者に限らずお子様の好きなキャラクターの絵を描いたり、シールを貼ったりしても楽しめると思います。

紙コップですぐできる手作りおもちゃ! 「メイクが消えるコップ」のアイデアが生まれたきっかけ

紙コップですぐできる手作りおもちゃ! 「メイクが消えるコップ」のアイデアが生まれたきっかけ

「メイクが消えるコップ」は、すっぴんの顔部分を普通のペン、メイク部分を「フリクション」で描いて作ります。フリクションは、書いた文字を付属のゴム部分で擦れば消えるという仕組みのペンで、熱で消えて冷やすと戻る性質のインクが使われています。この“熱で消える”性質をもともと知っていたので、イラストの下書きにフリクションを活用していたのですが、ずっと「この仕組みをおもちゃに応用できないかな?」と思っていました。絵で表現できて、消えると面白いもの……と考えて、思いついたのがメイク。いろいろと試してみた結果、60℃くらいのお湯でインクが消えるとわかったので、紙コップに絵を描いてお湯を入れる仕組みが生まれたわけです。面白さを追求するために、すっぴんのほうはわざとシンプルな顔にしました(笑)。
ちなみにフリクションで描いた部分は、冷凍庫に入れておくと再び浮かび上がってきます。消すときのお湯は熱湯じゃなくても良いのですが、戻すときはかなり低い温度じゃないとダメなようで、不思議ですよね。

「メイクが消えるコップ」は色々なアレンジが可能

「メイクが消えるコップ」も、Twitterで公開した動画に大きな反響がありました。簡単に真似できて、アレンジもしやすいからか、本当にたくさんの方が真似してくれましたね。とくに面白かったのは、映画「スター・トレック」のパロディで転送装置に入った人物たちが消えていくもの。それから、「サザエさん」に出てくる波平さんの髪の毛が消えたり、コロナ禍で話題になったアマビエがウイルスを消したり……ひとつのアイデアからたくさんのアレンジが派生して、とても興味深かったです。

お話の登場人物になれちゃう!?「顔ハメ絵本」のアイデアが生まれたきっかけ

「顔ハメ絵本」のアイデアが生まれたきっかけ

「顔ハメ絵本」は、夫との合作。もともと私は観光地にあるような顔ハメパネルが好きで、小学生向けに顔ハメ作品のワークショップを開催したことがあったんです。「なりたい自分になってみよう」というコンセプトで、子どもたちは思い思いの顔ハメを作りました。さらに、その作品に子どもの実物大の顔写真をプリントしてはめこみ、額縁に入れた肖像画を作成して美術館に展示したんです。本当に楽しくて、その体験から「顔ハメでもっと何か作れないかな」と、夫と相談して生み出したのが「顔ハメ絵本」でした。

昔話の登場人物になれる「顔ハメ絵本」

顔ハメができる絵本って、今はいろんな種類を見かけますが、この「顔ハメ絵本」を作った当時はあまり出版されてなかったんです。ちょうどそのころは、息子の寝かしつけで絵本を読むことが多かったので、この形にたどり着いたんですよね。こういう風に、いつ、どこで、何のためにといったシチュエーションを想定するのも、アイデアが生まれるきっかけになると思います。

手作りおもちゃのアイデアを生み出すコツ まとめ

おもちゃ作りは私にとって仕事という側面もありますが、根本的には“楽しい時間”です。子どものころから工作が好きで、アイデアを形にするための試行錯誤がとても楽しいんですね。私の手作りおもちゃに興味を持ってくださった方には、同じように楽しい時間を過ごしていただけたらうれしいです。でも、無理は禁物。忙しいなかで“育児を楽しまなきゃいけない”というプレッシャーでおもちゃ作りをしたり、完成度にこだわったりすると、逆に辛くなってしまうかも。常にクリエイティブに遊ぶ必要はなくて、余裕があるときや「やりたい!」と思ったときに作ってみるのが良いんじゃないかな、と思います。そうしてお子様と過ごした時間は、きっと大切な思い出になりますよ。

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