FPが解説! 各業種の年収減少によるリスクと新しい時代に備える「資産形成」のコツ

「給与は上がらないのに住宅ローンや子どもの学費でお金がかかる」「老後資金を貯めたいけれどなかなか貯まらない」など、お金に関する悩みは尽きないものです。では、将来や緊急事態に備えたお金を準備するには、何から始めれば良いのでしょうか? ファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さんに貯蓄や資産形成についてのアドバイスを伺いました。

ファイナンシャルプランナー・豊田眞弓のプロフィール
豊田眞弓 プロフィール

ファイナンシャルプランナー・住宅ローンアドバイザー・相続診断士

マネー誌ライターを経て、1994年よりFPとして活動。相談業務や講演、マネーコラム監修・執筆などで活動。「人生の3.5大支出」(教育・住宅・老後+介護)に備え、ハッピーで持続可能な家計の実現を提唱している。大学・短大で非常勤講師を務めるほか、「子どもマネー総合研究会」会長、「親の介護・相続と自分の老後に備える.com」の運営管理を行っている。座右の銘は「今日も未来もハッピーに!」。趣味は投資、講談。
ホームページ:FPラウンジ|家計相談、老後資金相続相談

ファイナンシャルプランナーの豊田眞弓です。生活様式や経済に大きな変化をもたらしたコロナ禍の影響で、収入が減って悩んでいる方は少なくありません。今回はそのような方々に向けて、ライフプランのアドバイスをするファイナンシャルプランナーの目線から、貯蓄や資産形成についてお話したいと思います。まずは社会情勢から見る各業種の年収減少リスクを把握し、今後どのような備えや働き方が必要になるのかを考えてみましょう。

コロナ禍で年収減少した業種は? 続く低成長の時代

コロナ禍で年収減少した業種は? 続く低成長の時代

※出典:経済産業省−経済解析室「ひと言解説集」

コロナ禍でとくに打撃を受けたのはサービス業、その中でも「生活娯楽関連サービス」に携わる方々です。上図は第3次産業(サービス業)に属する業種の生産活動を捉えるための指数ですが、これを見ても大きく下がったことがわかります。「生活娯楽関連サービス」には、宿泊業や旅行業、飲食店・飲食サービス、理容や美容、冠婚葬祭の生活関連、映画館や劇場、プロスポーツの興行など娯楽関連、競馬やゴルフ場などスポーツ施設提供業、そのほか遊園地・テーマパークやパチンコなども含まれます。経営が立ち行かなくなったお店や、従業員を減らさざるをえなかった会社も少なくないでしょう。雇用形態別だと、パート・アルバイトなどの非正規雇用者が大量に雇い止めされました。こうした働き方は女性の割合が高いことから、非正規雇用の女性が困窮し、女性の自殺者が増えるなど社会問題にもなりました。

一方で、非サービス業においては企業にもよりますが、あまりダメージがないところもあります。ボーナスの額が少し下がっただけという企業もあるようですね。公務員に至ってはほぼ影響なしです。まだ第6波、第7波と先は読めない状況ですが、ワクチン接種が広がったことで第5派の影響は収まった感があり、製造業の新卒求人も回復しています。今後は大きく収益が下がった業界も徐々に回復すると考えられるでしょう。

しかし、日本の平均給与はコロナ禍以前から“下がり続けるトレンド”にあり、この先も“低成長の時代”が続く、と予想されています。また、「人生100年時代」と言われるほど長寿化も進んでいるので、個々の自助努力による資産形成が重要になるわけです。ここからは資産形成のための“貯蓄と投資”について考えていきましょう。

年収減少の備えに「生活予備費」はマスト! 貯蓄のコツは?

年収減少の備えに「生活予備費」はマスト! 貯蓄のコツは?

コロナ禍のような特殊な状況だけでなく、地震や台風といった自然災害、倒産、リストラ、自分や家族の病気・事故で働けなくなるなど、収入減や予定外の出費によって家計が圧迫される事態はどんな家庭にも起こる可能性があります。そのようなときに生命線となるのが「生活予備費」の貯蓄。一家の大黒柱(収入の柱になる方)が会社勤めであれば生活費3~6ヶ月分、自営業やフリーランスの場合は6ヶ月~1年分程度は貯めておくように心がけてください。さらにお子様のいる家庭なら、大学時代の教育費を生活予備費とは別に貯蓄しましょう。そのほか、マイホーム購入や結婚・出産などのライフイベントに向けた“目的別の資金”も計画的に準備しておけると良いですね。

ついついお金を使ってしまう方にオススメ! 「貯蓄のテクニック」

貯蓄したいけど、なかなかお金が貯まらないという悩みはよく耳にします。貯蓄が苦手な方の多くは、入ってきたお金をあるだけ使ってしまう傾向にあるんですね。そんな方にオススメなのは「先取り貯蓄」です。勤め先が導入していれば、財形貯蓄や社内預金として給与から天引きされる形で貯蓄すると良いですよ。導入していないなら金融機関の自動振替定期を活用しましょう。

自分でお金を引き出して貯蓄用の口座に分けておくのも方法のひとつで、ネットバンキング上でももちろんOK。自分で細かく管理できるようになりたいという方には、ひとつの口座の中身をExcelで目的別に分ける方法もオススメです。家計簿は支出額を記録するだけでなく、支出内容の分析もすると有効ですね。貯蓄の方法には、強制的に貯蓄用の口座にお金を入れるパターン、自分で管理するパターンがありますが、いろいろと試してみて自分に合った方法を見つけましょう。

また、現在の収入では生活するだけで精一杯で、貯蓄に回す余裕がない……と感じている方は、収入そのものを上げることも視野に入れて将来設計を考えてみてはいかがでしょうか?

転職、副業、ダブルインカム…収入アップのためにできる働き方のアドバイス

収入アップのためにできる働き方のアドバイス

収入を上げる方法のひとつが転職ですが、収入がアップして希望の条件がすべて叶う転職というのはなかなか難しいところです。現在の仕事での給与にプラスして収入を上げるのならば、副業という方法がありますね。もちろん勤め先が副業を禁止していないことが前提ですが、今は国を挙げて副業を推進する動きがあるので、私もオススメしたい働き方です。副業や兼業で気を付ける点は、本業に支障のないように働くことと、無理をしすぎないこと。昼夜働き通しで睡眠がとれないようなハードな生活で、体を壊しては元も子もありません。また、現在片働きのシングルインカムの家庭の場合は、夫婦共働きのダブルインカムにすることも、世帯収入アップに有効です。

「働き方改革」によって推進される副業や兼業、コロナ禍で急速に普及したテレワークに加えて、週3〜4日勤務の正社員、定年45歳制度など、従来の「一社集中型」以外の働き方は、今後は日本でも増えていくと予想されます。さらに、転勤や部署異動、昇進・降格もなく契約範囲内で働く、海外ではスタンダードとされる「ジョブ型雇用」が日本でも浸透するのではないかと私は思っています。

ジョブ型雇用は専門分野に長けた人材を育てやすい・採用しやすいというメリットがあるため、デジタル化が加速する日本では積極的に取り入れるべき制度とも言われていますね。多様な働き方を選択できる時代になりつつある今、「一社集中型」の固定観念にとらわれることなく、ライフプランと収入のバランスを考慮した柔軟な働き方を考えてみましょう。

資産形成・資産運用のコツと注意点

資産形成・資産運用のコツと注意点

資産形成のスタートはまず“貯蓄”からとなりますが、その資産を運用してさらに増やす方法として“投資”があります。初心者の方にオススメなのは「つみたてNISA」ですね。つみたてNISAは口座から毎月自動引き落としで投資信託を買う「積立投資」です。通常、投資信託や株式は配当や売却益に税金がかかりますが、つみたてNISA口座なら、年間40万円までの元金から得られた配当や売却益が非課税になります。最大20年間は非課税で運用できるので、少額からコツコツ資産形成ができますし、途中で売却して取り出せるのもうれしいポイント。

株に興味のある方は、年120万円までの元金から生じた配当や売却益が非課税となる「一般NISA」を始めてみても良いでしょう。非課税運用期間は5年ですが、5年超運用したい場合は、翌年の非課税枠に移し替える「ロールオーバー」という方法もあります。

投資を始めるにあたって気を付けていただきたいのは、投資にはリスクがあるということです。生活予備費を確保したうえで、“3年以上は使わないお金の3割までの範囲で投資する”ということを意識して資産運用を始めてみてください。

お子様がいるご家庭では、最もお金がかかる大学・専門学校の時期に向けて、児童手当をベースに貯蓄します。財形貯蓄や自動積立定期、学資保険、個人向け国債(変動10)などで安全度を重視して運用するほか、教育資金を月1万5,000円積み立てるなら、そのうちの5,000円はつみたてNISAで積立投資をするのも一法です。インフレリスクに備える意味でも、長期の積み立ての場合は投資を組み込むことがオススメですね。また、住宅購入の頭金を貯める場合は、勤め先に財形貯蓄の制度があるなら「住宅財形(財形住宅貯蓄)」を活用して貯蓄すると、利子が非課税となりますよ。

老後資金の準備の仕方

老後資金の準備の仕方

資産形成する目的のひとつとして老後資金の準備がありますが、ひとくちに老後資金といっても求める生活レベルやライフイベントなどによって必要な金額は異なります。年金だけでは不足する生活費の累計額に、住宅の建て直しやリフォーム、車の買い替え、趣味などでかかる費用、子供の結婚祝い等など生前贈与分、葬儀費用などを合わせると、夫婦で3,000万円程度でしょうか。要介護期に費用が高額になる有料老人ホームへの入居を希望する場合は、その分も別途用意しておく必要があります。

年金は将来的に今より2〜3割ほど減らされる(物価が上がっても年金が上がらないなど、相対的な減額)と予想されているので、やはり老後資金は重要です。老後資金を貯め始めるタイミングは、40歳になる年か、お子様がいるなら末子が中学校を卒業する年のいずれか早い方が良いでしょう。

会社員であれば、職場で厚生年金の他にも年金に入っている場合があります。たとえば「企業型確定拠出年金」。これは会社側が従業員の年金口座に積み立てをして、従業員自身が運用するというものです。これの個人版が「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)」で、老後資金の準備方法としてオススメです。

月々の掛金の最低金額は5,000円と低額なので始めやすく、何より、掛金は全額所得控除の対象で、節税効果が最大のメリット。積み立てた資産を受け取る際には退職所得控除や公的年金の控除が受けられます。将来のためにしっかりと準備したい方は30代から、遅くても40歳までには始めると良いでしょう。フリーランスや自営業の方はもちろん、会社員・公務員、専業主婦でも利用できます。

各業種の年収減少によるリスクと新しい時代に備える「資産形成」のコツまとめ

職種や家族構成、環境によって生涯の収入や支出は人それぞれ変わります。しかし、どんな人生であってもお金はとても重要な要素のひとつ。働き方や生き方が多様化していく時代では、自分自身でよく考えて資産形成をしていくことが大切です。ライフスタイルに合わせ、将来を見据えた貯蓄と投資で先々に役立つ資産形成をしていきましょう。

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